***本編とは程遠い設定です。ごめんなさい。懐かしくて・その後、の番外編バージョン的な超ほのぼの小話です*** <br> 麗とマヤの或る朝

***本編とは程遠い設定です。ごめんなさい。懐かしくて・その後、の番外編バージョン的な超ほのぼの小話です***


麗とマヤの或る朝

     “はっ、はっ、はっ、・・・”
   
        早朝の川辺のランニングも何年になるのか。
   白百合荘にほど近い堤防は、長くマヤの野外稽古場だった。

   心は軽く暖かい。
   朝焼けに溶ける程、大きく深呼吸するとアパートへ折り返し走った。

    『麗!ただいま〜♪』

   二階に駆け上がり、ガタガタの小さなドアを開くと同時にマヤの大きな声がアパートに響いた。
    『マヤ!あんた、何時だと思ってるんだい。七時まえだよ!』

   毎度のやり取りだが、麗の心配は近所迷惑に留まらない。
   紅天女の正当な後継者として一流女優の道を歩みだしたというのに、マヤときたら自覚も
   なければ、自衛心のかけらもない。
   今の所はなじみのご近所に囲まれて、いつも通りの日々だが、いつおかしなファンやら
   パパラッチのような報道が来るとも分からない。

   寂しくはあっても、‘あの人’にマヤの今後を相談しなくてはならないと考えていた。

    『うわ〜、麗の目玉焼き、いつも美味しそう♪』

   先ほどの悲壮な考えが吹き飛びそうな麗だった。なんだかどうでもようくなってくる。
   天真爛漫なマヤを前にすると、心配事が杞憂だったとさえ思うのだ。

    『この間、大阪公演で泊まったホテルより美味しい!麗はホントになんでもできるのね!』

   満面に嬉しそうな笑顔で、茶碗のご飯の上に目玉焼きをのせて?き込んでいる姿は中学生の
   頃からさして変らない。

    大阪公演での宿泊先はリットカールドンのセミスイートだったはず。そこのメシよりウマい
   と言われるのは悪い気がしないが・・・、麗は気を引き締める。

   今日こそは言わないと・・・。    朝っぱらからなんて、なんだけど、大した事じゃないよって感じで・・・。

    朝食の味噌汁を椀によそいながら、ご飯を盛っているマヤに話かける。

    『ねえ、マヤ、あんたこれから住むトコどうするんだい?大都と契約した時、物件紹介も
      してもらったんだろう?』
    『うん、そうね・・・。三親等以外、同居不可、一人暮らしが、条件だったからまよちゃって。
    返事保留ってことねっ、て水城さんも・・・。』

    『だけどねえ・・・、夕べもアンタのパンツ盗まれてたよ。』
    『え〜?!夜だから大丈夫だと思ったんだけどなあ。やだ〜!!』
 
       『まあ、女優のパンツとも知らないで盗ったんだろうけどさ、あんたテレビの仕事もきてるじゃないか
     幻の戦国女武将弓姫がパンツ泥棒の被害にあうなんて、関係者も赤っ恥だよ。』

    『う〜ん、でもお、速水さんが・・・。』
    『また面倒でもあるのかい?』

    『一人暮らしになったら、時々手料理御馳走してくれって・・・。』

    『はあ〜。なんだいそりゃ。』
    『あたしの料理って、失敗多いし、それに一人暮らしのウチに速水さんを招くなんて・・・!
     恥ずかしくて死んじゃいそうっ!!(///)』

    『・・・まさか、あんたたちの関係って、進展なのかい?それに、速水社長があんたの料理に期待する訳
     ないだろ。長い付き合いなんだ、あんだのブキッチョは重々承知だろ。』
    『・・・進展って(赤顔)』

    『もう〜、この間、さやかの所行くから上手くやれって言ったのに!』
    『ええ?!でも、お話だけして速水さん帰っちゃったし。』

    『・・・なんだい、そりゃ??気の利いた所に連れ出してくれなかったのかい?』
    『アパートの前で10分位話たんだけど・・・。速水さん、仕事放りなげてきちゃったみたいで、水城さん
     から呼び出されてトンボ帰り。』

    『ったく。気を利かせたのに、速水社長も野暮だねえ。』
 
    『いいのよ、麗。今は気持ちを分かりあえただけで十分。速水さん、すごく忙しそうだし。
    ふふっ。』

    『そうかい、そうかい。朝っぱらからこんな話題ふって悪かったね。』
    『ううん、麗ありがとう。気を使ってくれたのね。』

    『まあ、あたしや月影のみんなの事は気にしなくていいから、しっかりおやりよ。』

    『うん。』
 
   **********************************************************************************************

    その日の午後、アパートに紫のバラの花束が届いた。
    マヤは嬉しそうに優しく花束を抱きしめている。
    想いが通じた今も、速水は正体を明かしていなかった。

    『相変わらず豪勢な花束だね。ん?なんだいこの小さな箱は・・・。』
    紫のバラの人からの服飾類のプレゼントと一緒に小さなケースが添えられている。

    ------お久しぶりです。テレビ出演決まったそうですね。
       さしでがましいのですが、プレゼントです。
       あなたが安心して演技できますように。
                      あなたのファンより
                          ---------------

           ケースには最新のカードキーとマンション名と所有のマヤ名義登記簿が添えられていた。
    大都芸能の名前入りの茶封筒に入って。

    マヤと麗は紫のバラの人の正体を知っていたが、この意図は測り兼ねた。
    『ねえ、マヤ。これはあの人、ワザとかねえ、それともミスかねえ・・・??』
    『麗。あたし、分からない・・・、分からないわ・・・!』

    二人が目を合わせている頃、聖は車を運転させながら想いをはせる。

    “夕べの盗聴録音で下着泥棒の件は真澄様もさすがに驚かれていた。
    マンションの登記簿は勝手ながら大都の茶封筒に入れさせていただきますよ。
    もう、正体もバレていると思うのはワタクシだけでしょうか・・・。は〜。
    もうそろそろ、いい加減、おやりなさいませ、真澄様!!!!”

    松本フラワーの運搬車は夕闇に向かって去っていった。
     
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